黒坂オートキャンプ場

〜共感を生み出すキャンプ場〜

2015年7月18日

共に守る自然溢れる森のキャンプ場

黒坂オートキャンプ場看板写真

今回伺ったキャンプ場「黒坂オートキャンプ場」は、今まで行ったどのキャンプ場とも異なる印象をあたえてくれるキャンプ場でした。


我々家族は、事前にキャンプ場のホームページのみならず口コミ情報なども結構細かく調べてから行くキャンプ場を決めるのですが、「黒坂オートキャンプ場」にはキャンプ場のホームページや口コミ情報からでは想像できない魅力がありました。


それは、「クワガタ見つけたよ!」という子供達の笑顔をこれからも見たいというオーナーさんの純粋な思いが伝わるキャンプ場であること、たとえばそれは森を守る明確なルールだったり、驚くほどリーズナブルな料金設定であったり、キャンパーと共に森を整備するイベントだったり、キャンプ場で体験する一つ一つのことが気持ちがいいほど一貫し、ぶれることなく「みんなが楽しめる森を守る」ということにつながっており、そこにとても強く共感できたからかもしれません。


徹底して山を守る姿勢

黒坂オートキャンプ場の森の写真

これからも多くの子供達にクワガタやカブトムシなど多くの虫たちに出会って欲しいという思いから森を守るルールがあります。それは木を傷める行為である木の根を掘ったり、木の表面に傷をつけたり、花火を禁止したりというものですが、その徹底したルールのおかげでこのキャンプの森は見事なくらいの自然を保持しており、普通に散歩しているだけでキャンプ場内を幾筋も流れる沢のせせらぎを聞きながら心地の良い森林浴が楽しめるだけでなく都会ではなかなか見ることのない多くの虫たちとの出会いがあります。

また、家に帰ってから撮った動画を見ていた気づきましたが不思議なくらいゴミが落ちておらず、自然が多いところに行きゴミが落ちているとげんなりした経験がよくありましたが、ここではそういう気持ちになることは一度もなく、キャンパーの方々のマナーの良さとオーナーの方の管理が行き届いていることがよくわかります。


超繁忙期でもリーズナブルな料金設定

炭とコーヒーカップ

商業的なキャンプ場が多い中、余計な装飾がされていないことやキャンパーが自分自身でできることは自分たちでするというルールであることもあり、サイトの利用料金が驚くほど安く、この時期であれば1サイト1泊8000円(家族4人)取るキャンプ場もある中でここはその半額の4000円でした。我々は2泊しましたが1万円でお釣りがくるとてもリーズナブルな料金設定なのです。


山うどをてんぷらにする地元の方々

また、キャンプ場においていろいろなイベントが開催されているのですが、そのイベントの参加費用も外部から昆虫の専門家の方を呼ぶ場合であっても大人でワンコインの一人500円程度、それ以外は無料です。それで、軽い食事やワインが振舞われたりします。 森や虫の話を聞きながら森を散策した後に食事とワインを楽しみながら他のキャンパーさん、キャンプ場のオーナーさんとその子供達、食事などをご用意いただいた地元住民の方々と緑の囲まれながら談笑するひと時は何事にも代えがたいものがあります。


森を学び、共に守るイベント

テリーさんの写真

子供達向けに開催される森の虫達のことを学べるイベントにおいてはいろいろな虫の名前や生態を教えてくれる中で森の木の扱い方などを伝えていました。


また、イベントの中に組み込まれる形でキャンパーが森を守る活動に参加できるようになっており、今回は土砂災害で流れてしまったキャンプ場の一角をキャンパーとその子供が総勢30名ほどで片付けました。

オーナーさんの話では将来その一角は子供達が遊ぶプレイグランドにし、同じ敷地内に設置されているログハウスは改良し、子供達が捕まえた虫の名前を調べたりできる小さな図書館にするとのこと。そんな形でキャンプ場作りに参加させてもらえることも大きな魅力だと思います。








昨年から今までに4つのキャンプ場に行ってきました。

それぞれに異なる魅力があるのですが、「黒坂オートキャンプ場」はお金では買えない何かが得られるキャンプ場ではないかと思います。


ということで前置きが長くなりましたが、ここから「黒坂オートキャンプ場」での我が家の体験内容をお伝えしたいと思います。


キャンプ場の構造

黒坂オートキャンプ場の場内マップ

標高500mの山間にあるキャンプであるため平野部とくらべて5度くらい気温が低く、思った以上に快適に過ごすことができます。

キャンプ場は第一・第二の二つのエリアで構成され、どちらも山の斜面に沿って道の左右にサイトが配置されています。


サイト数は第一、第二合わせて60強。

どのサイトも自然の木の配置を残して作られているため広さ、形はまちまちですので受付時に相談すると要望にあったサイトを教えてくれますよ。



黒坂オートキャンプ場のいいところ①:アクセスの良さ


我が家のあるさいたま市からは「川越インター」から圏央道→中央道というルートで行きましたが、行きだけ八王子JCTで少し渋滞にはまった以外は特に渋滞もなく片道2時間弱で着きました。また、兎角高速を降りてから遠いことが多いキャンプ場ですが、「黒坂オートキャンプ場」はインター降りてから8km、10分程度で着くためカーブが多い道だと酔いやすい子供達がいるご家族にも行きやすいのではないでしょうか。


黒坂オートキャンプ場のいいところ②:マンキーさんのお人柄

マンキーさんの写真

マンキーさんとは、キャンプ場の受付をされている方のことですが、この方がとても聡明で、人当たりの良い方でした。

なぜそう感じたかはとても説明が難しいのですが、説明に無駄がなく、それでいて冷たい印象を与えないのです。

全くうまく説明できている気がしないので、ぜひ、ご自身で行ってみてお話をしてみてください。


黒坂オートキャンプ場のいいところ③:豊かな湧き水


豊かな湧き水も間違いなくこのキャンプ場の売りの一つだと思います。

豊かな湧き水がキャンプ場を幾筋も流れる沢を生み出し、その流れとせせらぎが生み出す清涼感は体感気温を2-3度下げているように感じます。

また、前日の大雨のため今回我々は見つけることができませんでしたが、普段はそれぞれの沢でサワガニと出会えるようです。

沢で子供達と一緒に少し水遊びをしましたがなんとも水が冷たいこと。

虫取りのため森を歩き回って火照った体を一気にクールダウンしてくれました。

さらに大量の水が使えることからトイレや炊事場がいつも清潔で、不潔な印象を与える臭いが全くせず、その点も「黒坂オートキャンプ場」が見た目以上に良い印象を与える理由ではないでしょうか。



黒坂オートキャンプ場のいいところ④:虫の宝庫

昆虫たち

豊かな森の自然の中で育った多くの虫達に出会うことができます。

木を蹴飛ばせばクワガタが落ちてきます。

森に自生する百合の花では、国蝶であるオオムラサキが蜜を吸っています。

夜、サイト横の森に入るとセミが孵化する神秘的なシーンを見ることができます。

そのほかにも数え切れないほどの昆虫に出会え、まるで自然の昆虫図鑑のような森でした。


黒坂オートキャンプ場のいいところ⑤:美しい夜景

夜景

子供達が寝た後にキャンプ場の内外を散歩しましたが、星空をみていると何度も流れ星が目に入ってきました。

今回は残念なことに夜曇っていたためあまりいい写真が撮れませんでしたが、それでもキャンプ場から見下ろす笛吹市、甲府市の夜景やキャンプ場から見る星空はとてもきれいでした。

私の写真の腕が良く、晴れていればもっとあの美しさをお伝えできたのですが、本当にきれいですのでぜひ行ってみてください。


黒坂オートキャンプ場のいいところ⑥:不便さを楽しむ

管理棟のよる

水場やトイレがキャンプ場の入り口の小さな管理棟の周辺にしかなく、トイレに行くにも炊事場に行くにも急な坂道を行き来しなければなりません。

それは、キャンプから帰宅後全身が筋肉痛になるくらい結構ハードでした。

しかし、キャンプ場のあちこちにトイレや水場を作るということはその分だけ自然を破壊しなければならないことになります。


これはつまり、豊かな自然と便利で整備されたキャンプ場は両立しないということだと思います。


また、自然が多いということはクワガタやカブトムシもたくさんいるのですが当然蚊やハチ、ブヨなど人を指す虫もそこらじゅうにいます。


不便であるからこそ豊かな自然を楽しめるのが「黒坂オートキャンプ場」の魅力とも言えるかもしれません。


山梨県笛吹市について

キャンプ場から見下ろす街の景色

2004年に6町村が合併してできた市です。

27の山梨県の市町村の中で人口が増加している市町村は10しかないのですが、笛吹市はその中で8番目に人口が増加している市で2010-2014年の間に0.46%人口が増加しています。(山梨県の市町村の人口増加率ランキングはこちらをご覧ください。)


笛吹川が育んだ肥沃な土壌などの立地条件を活かし桃とぶどうの栽培が有名らしく、キャンプ場に向かう途中で桃やぶどうの畑をそこら中にみました。また、ちょうど台風が通った翌日にだったこともあり、たくさんの桃が畑に落ちており、農業を営む方のご苦労も垣間見たような気がしました。


また、「きみひめ」というブランドのとうもろこしも有名らしく、キャンプ場に行く途中に立ち寄った甲府南インターを降りてすぐのところにある農作物直販所でいろいろな種類の桃やぶどうと一緒に売られていました。

我が家族は「あかつき」という桃と「きみひめ」とうもろこしを購入し、キャンプの食事としていただきましたが、どちらもとても甘く、おいしかったですよ。


ちなみにこの農作物直販所は朝9時にオープンなのですが、オープンと同時に地元の方がたくさん流れ込み、一人一箱の桃の箱(たぶん12個くらい入っている)を購入し、それを抱えて次から次へと直販所から出てきます。中に入ると桃コーナーは人でごった返し、レジは長蛇の列。それは大変な盛況ぶりでしたが、それだけ美味しいということなんでしょうね。


そんな笛吹市ですが住み易いのか全国的に人口が減少する中で上述のとおり人口が増加しており2014年時点で71,495人。

人口構成を見てみると80歳以上人口がもっとも多く全体の8.2%を占めていますが、それに次いで40-44歳人口が7.6%となっており子育て世帯人口が多いことが伺えます。

これだけ子育て世帯が多いというのはとてもレアなケースであり、都心へのアクセスの良さと豊かな自然と一定の生活利便性を兼ね備えた地域であることが子育て世帯にとっては魅力的なのかしれません。 (笛吹市の詳細データはこちらをご覧ください。)


なお、笛吹市のHPを見てみたところ、そんな子育て世帯を応援すべく笛吹市では中学生医療費を無料にしているようです 。

(詳細はこちらの笛吹市役所のHPをご覧ください。)


また、産業構造をみてみると2009年のデータですが一次産業が全体の17.2%を占めており人口構造や産業構造が似ている市町村の一次産業比率が6.1%であることを考えると笛吹市はかなり一次産業比率が高いと言えます。それは裏返せばそれだけ肥沃な土壌を有しているということなのだと思います。


しかし、一次産業比率が高い地域に共通した特徴ですが一人当たりの課税対象所得が類似団体の平均を約10%下回っており、決して所得的に恵まれている地域ではないようです。


また、ほんとにごく一部の方々にしか接していませんが、キャンプ場の管理人であるマンキーさんとそのご主人、昆虫について教えてくれたテリーさん、ウドの天ぷらをふるまってくれた地元のお母さん方、大量にカブトムシとクワガタを取ってきてキャンプに来ている子供達に配る地元のおじいさんなど、この土地に住む方々の優しさと懐の深さを感じました。

笛吹市は、ここ数年転入者が増加傾向にあるようで、この地元の方々の人柄の良さも転入者が増加している背景の一つなのかもしれませんね。


まとめに

黒坂オートキャンプ場の森の写真

ということで今回は山梨県笛吹市にある「黒坂オートキャンプ場」に伺いましたが、このキャンプを終えたときにブログに残すか少し迷いました。

それは私もあのキャンプ場をこれからも長く子供達に残してあげたいという思いを強く持ったからです。


黒坂オートキャンプ場が有名になればたくさんの方が訪れることになり、その結果自然を壊したり、マナーの悪いキャンパーの比率も増えることになります。

管理人のマンキーさんやそのご主人のお話ではすでにそういう方が増えてきているらしく、クワガタを探すときに木の根や表面を傷つけたり、夜中に人が寝ているサイトに立ち入りクワガタを探したり、マナーの悪いお客さんが増えてきていることを危惧されていました。


そういう意味では黒坂オートキャンプ場の口コミ情報などが少ない理由もわかった気がします。

インターネットがこれだけ広がり、たくさんの情報が流通している今の社会の中であっても”本当に価値のある情報”はその価値を残すために心ある人が明確な意図を持って流さないようにしているという現実がここにあるのでしょう。


それでも、”価値がある”ということをたくさんの人が知り、その”価値あるもの”をどうすれば守れるかを伝え、多くの人がその価値を守ろうとすれば、聡明な我々はきっとその”価値あるもの”を守り、まだ生まれていない次の世代の子供達に残していけると私は信じています。


「黒坂オートキャンプ場」は、マンキーさんやそのご主人、地元の方々、豊かな森の自然と虫たちに会いにぜひまた伺いたいキャンプ場です。